
1992年に来日し、生活費と学費をアルバイトでまかないながら、大学時代より株投資を開始。中国情報専門紙の株式担当記者を経て黎明期のFX業界へ。香港や米国の金融機関で研修を重ね、トレーダーとしての経験を積む。
誰もが知るアナリスト、陳満咲杜氏。著作に、ザイFXに、ラジオNIKKEIにと幅広く活躍されていらっしゃいます。
語弊を覚悟で申し上げると、僕がFXをはじめた頃にザイのコラムで見かけては「いつもひねくれた意見を言っているなぁ」という印象がありました。しかし、現在では代弁してくれるかのような心地さえするのです。
今月は陳満咲杜氏とザイFXの本「勤勉で勉強家の日本人がFXで勝てない理由」を見ていきたいと思います。
目次
1992年、所持金5000円で来日
本書は以下の全4章で構成されています。
- 中国出身トレーダーが語る激動人生と投資クロニクル
- 常識をひっくり返すウソのない為替相場の話
- FXで勝つために必要なメンタルコントロール
- 最低限押さえておくべき5つのシンプルなテクニカル手法
FXを勉強したいという方にとって、陳満咲杜氏の歴史が展開する第1章は関係ないかもしれません。反対にどうやってここまで来たのだろうという方には、本書の中でもっとも興味深い話が書かれている部分でもあります(僕がそうでした)。
所持金5000円で来日するも、間違ってリムジンバスに乗って2000円まで激減した話。六本木「ジュリアナ東京」の近くで生活するも華やかな生活とは程遠く、3年間休みなしで働いた話。出資話で大失敗した話。
誰もができれば通りたくない道を進みながら、”水を得た魚”のごとく為替の世界で活躍をしはじめたことを知ると、「主婦でも100万円」コースがどれだけ愚かなことか分かります。
常識をひっくり返すウソのない為替相場の話
第2章に入ると、いよいよFXの話に入ります。ここで語られるのは、FXってウソばかりだよねというもの。
たとえばこんなものも…。
ファンダメンタルズ分析はすべて”後の祭り”で”我田引水”
ファンダメンタルズが為替相場に影響を及ぼすというのは「迷信」で、現実はまったく正反対です。まずは相場が動いてトレンドが発生し、ファンダメンタルズも変化してそれを裏づけていくという流れになっているのです。
結論を言えば、経済指標などといった各種材料がマーケットの方向性を決めるのではなく、マーケットの内部構造の変化がファンダメンタルズを誘導するということです。
FXトレーダには様々な方がいる前提で、陳満咲杜氏はテクニカルを重視するタイプのようです。周りにいませんか? 事後、さも知っていたかのように解説する人。
エコノミストやアナリストが実際に相場を張れば大敗する
ファンダメンタルズは市場の流れを決定づけないとすでに述べたように、彼らの解釈や予想は的中しないことのほうがはるかに多いのが実情です。実際に彼らがトレーディングを行えば、間違いなく大損を被ることでしょう。
ご自身もアナリストという立場でありながら、辛辣な意見を述べています。
日本の「成功トレーダー」はウソつきばかり
自称「成功トレーダー」の多くは、疑ってかかるべきだと私は考えています。現に、大半の人は本名を明かしていないばかりか、実績に関する客観的な証拠や第三者による検証もなく、手法自体も論理的に不可能なものが多いです。
僕も本名は明かしていないか…。そうはいっても「大勝ちしています」「こんな贅沢しています」なんて一言も書いていないので、どうかお許しを。
本名だろうが、「FXでいかに勝っているか」豪語している人にロクな人はひとりも見たことありませんよ。「予想がハズレたらカッコ悪いから事前には言わない」というセミナ屋もいます。予想がハズレても流れに乗れば利益を出せるのがFXだと思うのですがどうでしょう。
FXで勝つために必要なメンタルコントロール
本書では「為替に向いている人」としてこんな例があげられています。
チャートの指示に沿って淡々とマネーゲームを楽しめる人
余計な感情に振り回されず冷静にチャートのシグナルを発見し、タイミングよく値動きに乗ることだけに神経を集中させるべきです。
FXをマネーゲームというと、いつぞやの事件のときのように反感を買ってしまうようですが、投機ゆえに「ゲーム」というのは仕方ないのかもしれません。
反対に失敗する例として、
- クロス円以外はトレードしない
- 勉強にお金をかけるのを惜しむ
などがあげられています。「クロス円以外はトレードしない」というのは、初心者の域を抜ければすぐに解決しそうです。「勉強にお金をかけるのを惜しむ」というのは、よくあります。無駄に交流会などに行く必要はありませんが、本などを読むというのは大切なことだと言えます(図書館である程度は解決できますが)。
「海老で鯛を釣る」にも共通しますが、みんながまったく同じ条件で得られる情報では難しいと思います。
なにより、
マスコミの論調は疑ってかかること
とかく日本人は流行やブームに流されやすい傾向があります。そのことから、キャラの立っている、マスコミへの露出の多い人気アナリストの信者になってしまう人もいるようです。当然ながら、彼らの言っていることが100%為替相場で通用することはありません。彼らの言っていることを鵜呑みにするのではなく、結論を導き出すロジックに注目すべきです。
「1ドル120円を超えた」「日経平均が2万円を超えた」、様々なコピーに振り回されてしまっては、いつまでも掲示板でグチグチ言うだけの人になってしまいましょう。
僕は、第4章「最低限押さえておくべき5つのシンプルなテクニカル手法」を参考にすることはありませんでした(ザイFXも共著者であることを忘れずに)。
まとめ
陳満咲杜とザイFXの著作本「勤勉で勉強家の日本人がFXで勝てない理由」、いかがでしたでしょうか。
Facebookで「いいね」が集まるのはみんなと同じ思考であるという意味、そんな尖った考えを持っている方にはきっとぴったりの本になっています。
意見が多数派になったときに確実に負けるという相場の世界は大変ですが、どうかこの先も続けたいと思うのでした。
最後に、陳満咲杜氏関連のリンクを貼っておきます。
- Web:陳満咲杜の為替の真実
- Twitter:陳 満咲杜@FXの真実
- ラジオNIKKEI:陳満咲杜の「FXトレンドの真実」
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