2012年に亡くなった相場師、林輝太郎。この「相場師」という響きに”粋”を感じるのは僕だけでしょうか。「ファンドマネージャ」「エコノミスト」「コンサルタント」どこか耳障りの良いカタカナではなく、いつか「相場師」と名刺に刷ってみたいと思いつつ、「そうだ、名刺ないんだった…」と意気消沈するこの頃です。
今回ご紹介するのは林輝太郎氏の著作「脱アマ相場師列伝」。8人の相場師たちによる自分なりのやり方をぜひ参考にしてください。
本書には9人と出てくる箇所がありますが、初版に収録されたうちの1人は相場で有終の美を飾れなかった(消息不明)ということで除外されています。
林輝太郎「脱アマ相場師列伝」
「脱アマ相場師列伝」の初版は1981年に発売されました。当時、自費出版というのだから驚きです。「脱アマ相場師列伝」には8人の相場師のやり方が書かれています。
この本は、証券会社や商品会社の甘いささやきではなく、また成功の夢物語でもない。いずれも、読者と同じ立場の街を歩いているごく普通の人が、努力し、自立した経過とやりかたなのであり、まさに、お手本といってもよいものなのである。
書店を覗けば平積みになっている「主婦でもできる」「月に100万円」という類いのものとは一線を画する作品と言えます。
時代に流されることなく残っているものが素晴らしいというのは映画、音楽、本、どの分野においても共通することなのだと思います。
そういえば250年も前に作られたクラシックの名曲が収録された名盤が1000円程度で買えるのに対して、ほんの1週間で消費される音楽が3000円というのは実に興味深いものです。
基本的に世間の波をかき分けた方が美味しい思いをできるというのはこういうところにもあるのかもしれません。
さて、本の構成は以前ご紹介した「FXの小鬼たち」が近いものとなっています。
売買の目的は利益を得ること
世の中には売買の手法がなんと1,200種類を越えるほどあるのだそうです。ひょっとすると1981年のデータかもしれないので、現在はもっとあるのかも。
「そのうちのたった1種類の方法に上達すれば良い」と林輝太郎氏は述べています。移動平均線を使ったもの、逆張りを使ったもの、多くの通貨ペアを使ったもの、自分のスタイルを作ることが大切ということです。
それ(売買法)は、「知っている」
だけでは駄目で、知って、そして、
「出来るようになり」
そのうえ、
「上達する」
必要があるのだ
知っていることと出来ること(表記は漢字で失礼)はできても、「上達する」というのは難しいことですよね。ひたすらに手法を磨くというのはとても地味な作業でこれを乗り越えて、かつ続けることができた人こそが相場から利益を得られるのだと思います。
かくいう拙サイトの場合は感情を排した「システムトレード」になります。トレード時間より検証している時間の方が圧倒的に長いのが特徴ですが、これもまたひとつの方法なのかもしれません。
これもまた相場の世界に限ったことではなく、すべての分野において共通することなのだと思います。
本書に登場する相場師たち
「脱アマ相場師列伝」に登場する相場師の目次を箇条書きにしてみます。イメージがつかみやすいように実際の目次を多少編集しているのでご了承ください。
- 株式一銘柄で生活している人
- 「買い」しかやらずに成功
- サヤ取りのプロになりたての人
- 平均線を生かした人
- 売り上手の粋人
- 統計の鬼
- 四銘柄を手玉にとった女相場師
- 山奥に住む売り屋の選任
「株式一銘柄で生活している人」は以前ご紹介した「あなたも株のプロになれる」の立花義正氏です。個人的には異なるタイプですが「専門をつくる」ということはとても共感できる内容となっています。
FXをやっていて特に参考になるのは「平均線を生かした人」「統計の鬼」「四銘柄を手玉にとった女相場師」だと思います。
システムトレーダ必見「統計の鬼」
統計が好きな人は多いけれど圧倒的な統計をやる人は少ないというのは、商材サイトなどを見ていてもとても強く感じることです。
裁量トレードをやっている人の検証()というものが過去1ヶ月〜数ヶ月なのは論外ですが、自動売買ソフトが「イケる!」と判断するのに2年、3年というのも少し心許なく思います。
たしかに売買回数が多ければ信ぴょう性があるというのも分からないではないですが、2011年の震災後の下げやアベノミクスの上げを乗り越えれば大丈夫というのは危険です。
2010年のギリシャショックは? 2008年のリーマンショックは? まだまだ遡ったときに手法が通用するのかと言うと…。もちろん過剰な最適化(カーブフィッティング)が危険なのは言うまでもありません。
まとめ
十人十色のやり方を手中に「脱アマ相場師列伝」、いかがでしたでしょうか。
林輝太郎氏いわく
すべては実行力
今すぐ行動して、そして継続して、脱アマを目指して参りましょう。
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