EUの歴史とユーロの誕生


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6月のブレグジット(Brixit)以来、相場のテーマとして米国の利上げや日本の金融政策に注目が集まっていたことから、米国や日本のファンダメンタルズ情報が充実していました。その一方で、ユーロ圏への関心が薄れていた人も多いのではないでしょうか。しかし、テーマは再びユーロに戻ろうとしています。ここでは「FX攻略.com 2016年12月号」に掲載されている雨夜恒一郎さんのコラムを中心に見ていきましょう。

 

欧州とEU、ユーロ圏

金融市場において欧州といえば、通常はEU(加盟国28ヶ国)を指し、特に為替市場では単一通貨ユーロが流通するユーロ圏(19ヶ国)を指すことがほとんどです。

社会のお勉強のようですが、もう一度おさらいしておきましょう。「EU(欧州連合)」はドイツやフランスをはじめとした28ヶ国で構成されています。2016年の6月にEU離脱が決定したイギリスもEUに加盟していました。

「EU」とは別に、欧州連合の統一通貨が「ユーロ」になります。ややこしいですが、イギリスは「EU」には加盟していましたが(2016年6月離脱決定)、通貨は「ポンド」を使っていました。おなじようにデンマークもEUに加盟していますが、通貨は「デンマーク・クローネ」を使っています。

反対にユーロ圏でないにもかかわらず、通貨同盟の関係からユーロを導入した国(モナコ・バチカン・スペインなど)もあります。

 

EUの歴史

1951年にはドイツ・フランスを中心に、イタリア・オランダ・ベルギー・ルクセンブルクが参加し、欧州石炭鉄鋼共同体が発足。これら6ヶ国はEUの源流であり「原加盟国」と呼ばれています。

EUは、第二次大戦後、ドイツとフランスが「二度と戦争を起こさない」という合意が源流になります。このあとは学校で習ったように、ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体/1951年)→EEC(1957年)→EC(1967年)→EU(1993年)と進化を遂げました。ちなみに、EUは主要な拠点をベルギーの首都ブリュッセルに置いています。

 

ユーロの歴史

単一通貨ユーロが導入された1999年以前は、ドイツはマルク、フランスはフランというように各国がそれぞれ自国通貨(今ではレガシー通貨と呼ばれています)を使用していました。

1999年のユーロ発足前は、通貨統合の準備のために欧州通貨単位エキュー(ECU)が使われていました。1999年以前のユーロチャートは、このECUのレートをつなげたものになります(1エキュー=1ユーロ)。

 

EMSとERM

ユーロへの通貨統合を実現するにあたって、EUは欧州通貨制度(EMS)というシステムを作り、各国に対してまず自国通貨のECUに対する変動幅を一定範囲に収めることを義務づけました。これを欧州為替相場メカニズム(ERM)といいます。

EMS, ECM, ERMなど似ている言葉が多くて混乱しますね。一度まとめましょう。

  • ECU:ユーロ発足前に使われていた欧州通貨(読み方は「エキュー」)
  • EMS欧州通貨制度(European Monetary System)
  • ERM欧州為替相場メカニズム(European Monetary System)、自国通貨のECUに対する変動幅を一定範囲に収めること

 

ECBの歴史

ECBの金融政策はECBとユーロ圏19ヶ国の各国中銀からなる機関=ユーロシステムにより決定され、各国中銀を通じて実行されます。

ECBはユーロ導入の前年1998年に設立されました。

歴代のECB総裁は以下の3名になります。

  • 初代:ドイセンベルグ(オランダ)
  • 2代:トリシェ(フランス)
  • 3代:ドラギ(イタリア)

 

ECBの金融政策

ECBの政策金利は、主要政策金利であるリファイナンス金利、上限金利の限界貸出金利と下限金利の中銀預金金利の3つがあります。

ECBは量的緩和策として、現在月額800億ユーロの資産買い入れを行っており、これを少なくとも2017年3月まで継続する方針を示しています。

また難しい政策金利が3つ出てきました。まとめましょう。

  1. リファイナンス金利:ECBが資金供給を行う最重要金利
  2. 限界貸出金利:金融機関が市場から資金を調達できず、中銀からオーバーナイトで借入れる場合に適用される金利
  3. 中銀預金金利:市場で資金の貸出先が見つからず、やむなく中銀にオーバーナイト預金する場合に適用される金利

 

欧州債務危機と金融システム不安

2009年10月、リーマンショックの傷も癒えない中、ギリシャがユーロ参加時の財政赤字を過小に報告していたことが発覚。これをきっかけに財政事情が悪い国(いわゆるPIIGS)の国債が暴落し、欧州債務危機が勃発しました。

また欧州の金融機関のバランスシートは大きく毀損し、ドイツやイタリアなどの大手金融機関の株価が暴落するなど、今も金融システム不安がくすぶっています。

2010年5月6日のギリシャショック(フラッシュ・クラッシュがあった日)を覚えている方も多いと思います。財政事情が悪い国のPIIGSは、ポーランド・アイルランド・イタリア・ギリシャ・スペインの5ヶ国です

 

ブレグジットの影響

今のところ英国経済が急激な景気後退に陥る事態は回避されており、短期的にはむしろ製造業がポンド安の恩恵を受けている模様です。またユーロ圏経済も、英国向けの輸出が多少影響を受けるものの、英国がEU離脱を選択した影響は軽微にとどまっています。

2016年6月の国民投票により、イギリスのEU離脱が決定しました。これをBritishとExitを合わせた造語で「Brexit(ブレクジット)」と呼びます。2017年初めには、イギリスのEU離脱通告・交渉開始が予想されるため、今後の動向も注目されています。

 

ユーロ懐疑論

いまだに欧州統合に反対し、「壮大な社会実験」と揶揄する向きも少なくありません。こうした考え方を「ユーロ(欧州)懐疑論」と呼んでいます。

ユーロの創設によって域内での商品、サービス、資本、人の自由な移動が可能になるなど、その恩恵は大きいものがありました。反面、異なる経済・財政事情を持つ国々が同じ通貨を使うことで軋轢も少なくありません。そのため、現在も「ユーロ懐疑論」がたびたび話題に出ることがあります。

 

まとめ

EUの歴史とユーロの誕生について見てきました。FXトレーダーなら知っていることもあれば、意外と抜けていることもあったのではないでしょうか。たまにはテクニカルから視点を外し、歴史を知ることで、新しいものが見えてくるのかもしれません。


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しゃまらーしか

しゃまらーしか

ひょんなことからFXサイトを作ったシステムトレーダ。東京都港区在住。スプレッドシートを使って過去のチャートを分析するのが得意です。MT4を使ったEAの開発もしています。大好物の甘い物を求めて、今日もVivienne Westwoodのお洋服をこしらえて甘味処を探索しています。

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