きっと景色が変わる「ゲイリー・スミスの短期売買入門」


ゲイリー・スミスの短期売買入門

私が日常どのようにトレーディングをして過ごしているかを知ったら、多くのトレーダーはがっかりするかもしれない。魅惑に満ちた日常でもなければ、ぞくぞくするほど刺激的なものでもない。

このような書き出しではじまる「ゲイリー・スミスの短期売買入門」。そこには日本のFXで成功した()と言われる人たちの華々しい高層タワーマンションもなければ、美味しそうな食事とも縁がありません(尤も最近は秒速で億を稼ぐことすら虚栄だと伝わってきましたが)。

このゲイリー・スミスというトレーダ自体がかなりのユーモア溢れる文章で皮肉たっぷりに伝えてくれる内容は、きっと多くのFXトレーダにとって代弁してくれる一冊にもなると思います。

たとえば、一時メディアに取り上げられ、実力以上に話題になってはすぐに消えた多くのトレーダたちが発狂しそうなこんな文章まで−。

かつては花形であったが今は盛りを過ぎたトレーダーが生計を維持するために本を書くのとは訳が違うのだ。

今回は場合によっては批判すら厭わない「ゲイリー・スミスの短期売買入門」を見ていきたいと思います。

 

ゲイリー・スミス

ゲイリー・スミスは度々本人が言葉にして表すように口だけのアナリストでもなければトレーディングを実際にやっていない理論家でもなく、列記としたトレーダです(断定しておいてなんですが、もちろんお会いしたことはありません)。

システムトレーダの神様であるラリー・ウィリアムズも本書に賛辞を寄せています。

「ゲイリー・スミスは、現実にトレーディングに携わっている。観念的な儲けの手口や子供だましのプログラムではなく、トレーディングで実際に利益を生む方法を学びたいと真剣に考えているなら、これは必読の書である。私はもうめったに投資の本を読むことはないのだが、本書は一言一句をおろそかにせずに読んだ。それほど重要な本なのでぜひとも手に取っていただきたい」

トム・デマークもそうですが、ラリー・ウィリアムズと繋がりがあることが分かるとどこかホッとしてしまいます(それは信者だ)。

こうして見るとゲイリー・スミスが神がかったように見えますが、もちろん順風満帆だったわけもなく、トレーディングで生計を立てられるまでの道のりは長く、19年もの間、口座残高が上がったり下がったりを繰り返しているブレイクイーブンだったそうです。

 

自暴自棄のトレーダーへの救いの手

ゲイリー・スミスが本書を執筆した理由として2つをあげています。

ひとつは損を出して自暴自棄になったあるトレーダが助けを求めてきたこと。実際に色々と書き始めると他にも同じように思っているトレーダが数多くいたようです。

そして、もうひとつはまたもや強気な姿勢を見せてくれます。

限られたトレーディングの経験しかないか、実地にトレードをしたことのない学者や理論家が書いたトレーディングに関する書物がまん延していることに対抗するためである。

たとえば、EA(自動売買ソフト)を開発している人の中にはFXをやっていないにもかかわらず、数字だけをいじくってEAを作る人もかなりの数いるのが現状です。もちろん直近の相場に合わせたきれいな右肩上がりの曲線に多くのトレーダが魅せられます。

この業界には予想を立ててトレーディングのツールを宣伝したり売り込んだりするが、実際にトレーディングをする度胸がない人間がごまんといる。

おっと、零細ながらfx-onさんで販売している僕もそっち側の仲間入りをしないように気をつけなければいけません。

また、ゲイリー・スミスは投資本の蒐集家としても知られており、450冊以上にもなっているそうです。度々引用されるので分かりますが、古今東西すごい量の書籍に触れており、その造詣の深さを知ることができます。

 

チャートパターンの98%はランダム

ゲイリー・スミスの特徴のひとつとしてあげられるのがチャートを見ないことです。もう少し具体的に言うとチャートパターンというものは一切考慮しません。

幾つかの研究によれば、チャートパターンの98%は、紙上に描かれたランダムでねじれた曲線にすぎないそうだ。毎日コインを投げて表が出れば0.5ポイントの値上がり、裏が出れば0.5ポイントの値下がりと決めておく。この無作為のコイン投げの結果に基いて株価をチャートに描いてみると、ヘッド・アンド・ショルダーのフォーメーション、フラッグ、ペナント、トライアングル、トップ、そしてボトムなど、あのおなじみのクラシックなパターンが現れた。

ジャック・シュワッガーの著作「新・マーケットの魔術師」に出てくるウィリアム・エックハートもこのように述べています。

チャート上でよく見えることのほとんどは―そう、ざっとその98%は実際には役に立たない

反対に言えば、これらどうにか分析している人がいるとしたらそいつはニセモノだということが判明する皮肉なことも分かります(有名なあの人もあの人もそうだ…)。

ちなみに身分はまったく違いますが、僕もチャートは参考にしません。注文をするのに表示はしますが、あくまで数字を使うだけで「ここはレジスタンスがどう」とか言われるだけで鳥肌が立ってしまうタイプだったりします。

 

損を出すトレーダーが多いのはなぜか

損を出すトレーダーが多いのはなぜかという問いに、ゲイリー・スミスはこう答えています。

彼らはマーケットの知識か、自分自身についての知識のいずれかを欠いているので、現実性のあるトレーディング戦略を開発することができなかったのである。

僕は多くのトレーダと言われる人たちのブログを拝見する機会があります。その中では様々な手法をいじくり回しては過剰な最適化を試みる人がとても多いように感じます。

どのEAが良いのか、どのFX会社で取引するとほんの僅か成績が改善するのかということばかりに注力し、相場の手法を学ぶすることを完全に放棄しているように見えるのです。

トレーディングには、リスク、不確実性、予期しない出来事がつきものである。けれどもたいていのトレーダーは、避け難いこの事実を認めようとしない。彼らはリスクをすべて取り除く方法を探しながらトレーダー人生を送るのである。こういうトレーダーがマーケットの秩序を説き、取引予想法を売りつける商人の手玉に取られやすいのだ。

連敗が続くとその手法は使えないものと判断し(大好きなバックテストの結果に表示されている最大ドローダウンも考慮しない)、次から次へと手法を乗り換えては延々と同じ場所に居続けます。

 

紙の上でのトレーディングの無意味さ

僕が知っているだけでもひとり、そしてまたひとりと自分でシステムを作っておきながらそれを使うことは決してなく、デモ口座でしか運用しないというプログラマがいます。

ゲイリー・スミスは本物のお金が絡むと、マーケットに対する見方が変わると述べています。

私が知っている、紙の上とシミュレーションでのスーパートレーダーは相場の変わり目を読む超人的な能力を持っている。けれども彼らは、自分のお金をトレーディングに注ぎ込むといつも惨めなまでに失敗するのだ。

心理が与える影響については20歩離れてワイングラスの足を撃てると友人に自慢した男の話が面白いです。友人はこう切り返しました。

「ワイングラスが弾丸を込めたピストルを持って真っすぐ君の心臓を狙っている場合でもワイングラスの足を撃てるのかい」

 

まとめ

きっと景色が変わる「ゲイリー・スミスの短期売買入門」、いかがでしたでしょうか。

相場をはじめて19年後にようやく利益が出るようになったとかすごいですよね(そして、怖いですよね)。

本書で度々繰り返されるように口だけのトレーダにならないために、一見連戦連勝している人の養分にならないためにおすすめできる一冊です。

ゲイリー・スミスの短期売買入門


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しゃまらーしか

しゃまらーしか

ひょんなことからFXサイトを作ったシステムトレーダ。東京都港区在住。スプレッドシートを使って過去のチャートを分析するのが得意です。MT4を使ったEAの開発もしています。大好物の甘い物を求めて、今日もVivienne Westwoodのお洋服をこしらえて甘味処を探索しています。

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